遺産分割の際に注意すること

文責:弁護士 井川卓磨

最終更新日:2024年08月15日

1 「法律に従った相続」というのは簡単ではない

 遺産分割においては、相続人の間で協議をすることで分割内容を決めていく必要があります。

 ここで、「法律に従った相続」にするといった場合、法定相続分を念頭においていることが多いといえるでしょう。

 しかし、「法律に従った相続」という意味は一義的なものではありません

 法的には、相続人の間で合意さえできれば、特定の相続人が何も財産を取得しないこともできますので、これも「法律に従った相続」であるといえるでしょう。

 相続分を決めるにあたっても、特定の相続人に寄与分や特別受益があった場合には、これを考慮して相続分が決められることになります。

 しかし、そもそも寄与分や特別受益にあたるかどうか、あたるとして、どのように相続分に反映されるのかどうかは判断が分かれる部分であり、簡単に決められるものではありません。

 不動産の分割方法については、「相続分に応じて共有にする」というのも「法律に従った相続」にはなりますが、そのようにすれば財産の種類によっては管理や処分が大変になる可能性がありますので、これが相続人全員の利益となるわけではありません。

 相続人の誰かが代償金を払って不動産を取得することになったときに、その評価額に争いがある場合も考えられます。

 その際には、厳密には不動産鑑定をする必要がありますが、この鑑定費用は高額になる可能性があり、それが常に妥当だともいえません。

 このように「法律に従った相続」というのは、仮に専門家が関与したとしても簡単なものではありません。

 常に妥当な内容になるともいえませんので、しっかりとその点を理解したうえで、専門家からのアドバイスを受けながら、遺産分割を進めていく必要があります

2 相続税のことも考慮して進めること

 相続税がかかるのであれば、相続税のことも考慮して、遺産分割を進める必要があります

 相続税がかかるかどうかは、相続財産の内容や相続人の数などによって決まりますので、まずはこの点を確認しましょう。

 相続税がかかる場合には、相続の開始を知ったときから10か月以内に相続税の申告をしなければなりませんので、この期限に注意する必要があります。

相続税の申告期限については、こちらもご覧ください。

 この期間内に遺産分割がまとまらない場合にも、期限内に未分割の状態で相続税の申告と納付をすれば問題ありませんが、特例の適用等ができません(参考リンク:国税庁・相続財産が分割されていないときの申告 )。

 また、再度、修正申告をする必要がありますので、できれば申告の期限内に遺産分割ができている方が望ましいといえます。

 遺産分割の内容を決める場合には、そのような分割内容にした場合に、相続税の各種特例の適用が受けられるかどうか、自分が支払うべき相続税を賄うことができるかどうか、二次相続も踏まえたうえで相続税についての配慮がされた内容になっているかどうかなどを考慮しておく必要があります。

 このような相続税についての考慮をしていなければ、当事者が想定していなかった不利益を被る可能性や、思わぬトラブルにつながる可能性があるといえます。

3 手続きができるような書類を準備すること

 遺産分割が決まったら、その内容の遺産分割協議書を作成する必要があります。

 遺産分割協議書を作成する目的は、当事者間で決まった内容を文書にしておき、後日の争いにならないようにするという面もありますが、一番の目的は、相続手続きに利用するためでしょう。

 そのため、遺産分割協議書は相続手続きに利用できる内容にしておくということが重要です。

 不動産については、誰がどの不動産をどのように取得したのかを明確に記載しておく必要があります。

 不動産は、土地であれば所在や地番、地目などで、建物であれば所在や構造、床面積などで特定する必要があり、これは法務局で登記されている内容のとおりに記載する必要があります。

 登記されている不動産の相続手続きは法務局に申請をしてする必要がありますが、不動産の記載内容等に誤りがあると、手続きを進めることができません。

 預貯金については、相続の対象となる預貯金が含まれることが分かる内容にしておく必要があります。

 特に、相続人が口座の預貯金を分割して取得する内容にした場合には、端数を誰が取得することになるかまで定めておかなければ、金融機関が相続手続きに応じてくれない可能性がありますので、この点についての定めも記載するようにしましょう。

 遺産分割協議書は実印で押印する必要がありますが、その理由は、相続手続きにおいて、実印で押印された遺産分割協議書と相続人全員の印鑑登録証明書の提出が求められるためです。

 印鑑登録証明書についても、金融機関から発行期限内のものを求められる場合がありますので、注意が必要です。

 相続手続きにおいては、場合によっては、遺産分割協議書以外の書類の提出を求められたり、遺産分割協議書内に一定の文言を入れておくことを求められたりすることがありますので、それらの点についても注意して、手続きができるような書類を準備することが重要です。

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